03ネイルのための生理解剖学

骨のはたらきと成分

ネイリストはお客様の手や足に直接触れる仕事です。手足を支える骨・関節・筋・腱のつき方や役割を知っておくことが、的確なサービスにつながります。骨の構造や機能を研究する分野を骨学といいます。

骨は、歯のエナメル質を除けば体の中で最も硬い組織です。成分は無機物と有機物の結合組織からできています。

成分おもな中身割合
無機物炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど全体の2/3
有機物細胞、血液など全体の1/3

骨には次のようなはたらきがあります。

体を形作り、支える…骨組みとして体形を保ちます。②レバーの役目…筋肉と結合して、体を動かすてこの役割をします。③保護する…体内の器官や組織(内臓)を守ります。④血液細胞を作る…骨髄でさまざまな血液細胞が作られます。⑤ミネラルを蓄える…カルシウム・マグネシウム・ナトリウム・リンなどを貯蔵します。

なお感覚を脳へ伝えるのは神経の役割であり、骨のはたらきではありません。ひっかけ問題で問われやすいので注意しましょう。

骨の成分の円グラフ。無機物(炭酸カルシウム・リン酸カルシウム)が2/3、有機物(細胞・血液)が1/3
骨の成分

骨は硬い塊に見えますが、有機質と無機質が組み合わさった組織です。図の比率がそのまま問われます。

無機質が約3分の2、有機質が約3分の1。無機質の主体はリン酸カルシウムで骨の硬さを、有機質の主体はコラーゲンで骨のしなやかさを担います。硬いだけでは衝撃で砕けてしまうため、両方が必要です。

爪との対比も覚えておくと整理できます。爪はケラチン(たんぱく質)でできており、カルシウムは主成分ではありません。「爪を強くするにはカルシウム」という一般的なイメージが誤りの選択肢に使われます。

骨の付属組織と関節

骨は関節のほか、下の付属組織とともに体を形作っています。名称とはたらきを対にして覚えましょう。

名称はたらき・特徴
骨膜(こつまく)骨を覆って保護する膜。腱や血管、神経の付属組織として重要な役割を持つ。
骨髄(こつずい)骨の内部の隙間を満たす組織。血液の血球や血小板を作る造血作用がある。
軟骨(なんこつ)骨に似て頑丈だが伸縮性のある物質。骨への衝撃をやわらげる。鼻や耳のように顔立ちを形成するものもある。
関節滑液(かんせつかつえき)骨と骨が交わる関節の摩擦を防ぐ潤滑液。軟骨に栄養を与える役割もある。

骨自体は動きませんが、筋肉が骨格を覆い、関節という結合点で交わることで、体はさまざまな動きができます。関節には、腰や肩のように一つの骨が別の骨の空洞部分に収まって回転する球関節、手首や足のくるぶしのように二つの骨が互いの上を滑るように動く滑空関節などがあります。

関節の種類の図。球関節(一つの骨が別の骨のくぼみに収まって回転する)と滑走関節(二つの骨が互いの上を滑るように動く)
関節の種類

関節の種類は、どの方向に動けるかで分かれます。図では骨の合わさり方の形に注目してください。

手指に関わるのは蝶番関節(ちょうつがいかんせつ)です。扉の蝶番と同じで一方向にしか曲がりません。指を横に曲げられないのはこのためです。一方、親指の付け根は鞍関節(あんかんせつ)で、向かい合う馬の鞍のような形をしており、親指だけが他の指と向き合う動きができます。

関節を支える付属組織も対で覚えます。靭帯は骨と骨をつなぎ腱は筋肉と骨をつなぐ。つなぐ相手が違うだけなので、取り違えないようにしましょう。

上肢と手の骨

腕は上肢(じょうし)、足は下肢(かし)に分類されます。上肢の骨は、肩から指先まで次のように並んでいます。

名称位置・特徴
肩関節(けんかんせつ)肩の部分の関節。
鎖骨(さこつ)肩甲骨の上部から首の前まで伸びる、少し太めの骨。
肩甲骨(けんこうこつ)肩関節より少し体の内側にある、幅の広いしっかりした骨。
上腕骨(じょうわんこつ)肘から肩にかけての1本の骨。この部位を「上腕」と呼ぶ。
橈骨(とうこつ)手首から肘までの親指側の骨。
尺骨(しゃっこつ)手首から肘までの小指側の骨。橈骨と対になっている。
手根骨(しゅこんこつ)手首付近にある小さな骨の集まり。4個ずつ2列に並んだ計8個の、ふぞろいな形の骨。8個の骨からなる関節でもある。
中手骨(ちゅうしゅこつ)手根骨から指の付け根にかけて、それぞれの指にある骨。片手に計5個
指骨(しこつ)指の骨。親指に2個、それ以外の指に3個ずつで、片手に計14個

手首から肘までを前腕、指先から手首までをと呼びます。前腕に橈骨と尺骨の2本があること、そのうち親指側が橈骨であることは頻出です。

指の骨(指節骨)は、付け根から順に基節骨・中節骨・末節骨と呼ばれます。爪がのっているのは先端の末節骨です。ただし末節骨は指先のいちばん先までは届いておらず、その先を爪が覆うことで指先が守られています。

手の骨格図。手根骨・中手骨・基節骨・中節骨・末節骨の位置
手の骨格
上肢の骨格(右前面)の図。肩関節・鎖骨・肩甲骨・上腕骨・橈骨・尺骨・手根骨・中手骨・指骨の位置
上肢の骨格(右前面)
手根骨8個の図。4個ずつ2列に並んだふぞろいな形の骨
手根骨(8個)

手根骨は4個ずつ2列に並んだ計8個です。図で列を意識すると数を間違えません。ひとつひとつが小さくふぞろいな形をしていて、これらが集まって8個の骨からなる関節を作っています。

手首がさまざまな方向に動くのは、小さな骨が多数集まって少しずつずれるためです。1本の大きな骨ではこの自由度は出せません。

数字は足と対にして覚えるのが確実です。手根骨は8個、足根骨は7個。手足で数が違うのはここだけで、中手骨・中足骨は5個、指骨は14個で共通です。

下肢と足の骨

フットケアを扱うため、下肢(足)の骨も出題範囲です。上肢と対応させて覚えると、名前も個数も整理できます。

名称位置・特徴
下腿(かたい)膝から足首までの部位。上肢でいう前腕にあたる。下肢は人の足・脚部を指し、膝から下は下腿骨・足骨で構成される。
足(あし)指先から足首までの部位。
脛骨(けいこつ)下肢の内側にある長い骨。いわゆるむこうずねの骨。
腓骨(ひこつ)脛骨と共に下腿骨をなす、細長い骨
足根骨(そっこんこつ)脛骨と腓骨につながり、足根部を形成している7個の骨。
中足骨(ちゅうそくこつ)足根骨から指の付け根にかけての、5個の骨。
指骨(しこつ)中足骨から先の、14個の指の骨。
下肢と足の骨格図。脛骨は内側の長い骨、腓骨は脛骨と並ぶ下腿の骨、足根骨は7個、中足骨は5個、指骨は14個(母趾2個・他の趾は3個ずつ)
下肢と足の骨

上肢と下肢を対応させて覚える

並びは手とほぼ同じです。手根骨→中手骨→指骨に対して、足根骨→中足骨→指骨と並びます。

部位上肢(手)下肢(足)
2本並ぶ長い骨橈骨・尺骨脛骨・腓骨
手首/足首の骨手根骨 8個足根骨 7個
甲の骨中手骨 5個中足骨 5個
指の骨指骨 14個指骨 14個

数で唯一ずれるのが手根骨は8個、足根骨は7個という点です。ここが狙われます。中足骨5個・指骨14個は手と同じで、指骨が基節骨・中節骨・末節骨に分かれるのも足の指と同じです。

手の筋肉と腱

筋には横紋筋(すなわち骨格筋)・心筋・平滑筋の3種類があり、人間の体重の約40〜50%を筋が占めています。一般にただ「筋」といえば、骨格筋を意味する場合が多いといえます。

種類特徴
横紋筋
(=骨格筋)
中央が紡錘状(ぼうすいじょう)に膨らんでいて骨に付着し、筋の収縮によって骨を動かす。ふくらんだ両端を筋頭という。
心筋心臓を動かす筋。
平滑筋内臓や血管の壁をつくる筋。

骨自体は動かないため、手や指を動かしているのは筋肉と、筋肉と骨をつなぐ腱(けん)です。ただし骨格筋は直接骨に付くのではありません「腱」という、筋を包んでいる筋膜の両端が強い結合組織の帯となり、この部分が直接骨とつながっています。

手のひらには腱を包む腱鞘(けんしょう)という組織があり、腱がなめらかに動くのを助けています。

前腕の筋と腱の図。左は手のひら側で屈筋、右は手の甲側で伸筋。筋肉が腱に移行し、手首の腱鞘をくぐって各指へ向かう
前腕の筋と腱(屈筋と伸筋)

指や手首が屈伸できるのは、屈筋(くっきん)と伸筋(しんきん)という2つの筋のはたらきによるものです。この2つは対になっていて、一方が収縮すると他方が弛緩するというように互いに拮抗し、自由な屈伸ができます。

名称位置とはたらき
屈筋前腕の手のひら側の筋肉。手首や指を曲げる
伸筋前腕の手の甲側の筋肉。手首や手、指を真っすぐにする

前腕にはこのほかに回内筋(かいないきん)と回外筋(かいがいきん)の2種類の筋があります。名前が似ているので、手のひらがどちらを向くかで区別しましょう。

名称はたらき
回内筋腕を内側にひねり、手のひらを下に向けることができる。
回外筋腕を外側にひねり、手のひらを上に向けることができる。

手と指には小さな筋肉がたくさんあって指の関節を覆い、手を形作っています。それらの筋と腱が収縮や弛緩することで複雑に絡み合い、指や手首を動かしています。

神経系の分類

手指が鋭い感覚を持つのは、筋肉や腱を動かす指令と、皮膚で受け取った感覚が神経によってやりとりされているからです。神経系は大きく中枢神経系末梢神経系2つに分けられます。

分類構成・はたらき
中枢神経系脳と脊髄から成り立っている組織。体の司令塔にあたる。
末梢神経系脳と脊髄から伸びている知覚神経線維と運動神経線維でできており、体のすべての部分に行き渡っている。

末梢神経系はさらに、脳脊髄神経自律神経に分けられます。脳から出る脳神経は12対、脊髄から左右対称に出る脊髄神経は31対です。数字はそのまま問われるので正確に覚えましょう。

自律神経は、自分の意志とは無関係に動き、内部環境を調整している神経です。次の2つが対になってはたらきます。

名称はたらき
交感神経「闘争の神経」とも言われ、活力を高める。
副交感神経攻撃的な活動を抑制し、鎮静化させる。

神経は伝わる向きでも分類されます。遠心性は中枢から末梢神経へ興奮を伝達することで、運動神経がこれにあたります。求心性は末梢神経から中枢に興奮を伝えることで、知覚神経がこれにあたります。「中枢から遠ざかる=遠心性=運動神経」と覚えると混同しません。

神経系の大別の図。構造では中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系(脳脊髄神経→脳神経12対・脊髄神経31対)に分かれ、機能的分類では自律神経(交感神経・副交感神経)と体性神経(運動神経・知覚神経)に分かれる
神経系の分類

末梢神経系は、伝える経路で分ける脳脊髄神経のほかに、機能的分類として自律神経体性神経(たいせいしんけい)に分けられます。

分類内容
自律神経脳や脊髄から出て内臓諸器官に分布する。自分の意志とは無関係に動き、内部環境を調整している。交感神経・副交感神経がこれにあたる。
体性神経脳に出入りする脳神経と、脊髄に出入りする脊髄神経の二つを指す。運動神経・知覚神経がこれにあたる。

中枢神経系の位置も押さえておきましょう。脳は頭蓋骨の中にある中枢神経の主要部で、脊髄は脊椎(せきつい)の中を通って脳に続く中枢神経です。

皮膚感覚と手の神経

人間の感覚は5種類(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・皮膚感覚)あるとされます。このうち皮膚感覚に含まれるのは触覚・圧覚・温覚・冷覚・痛覚で、味覚は皮膚感覚には含まれません(ひっかけに注意)。

これらの感覚を受け取る受容器は指先に特に集中しており、手で受け取った感覚は知覚神経によって脳へ伝えられます。ネイルの施術で細かい作業ができるのも、指先の感覚が鋭いおかげです。

手に分布する主な神経には、正中神経・尺骨神経・橈骨神経の3つがあります。それぞれ手のひらや手の甲の担当する範囲が分かれています。

循環のしくみ

体内の循環は、血液の流れを第一の循環組織リンパの流れを第二の循環組織として捉えられます。

手関節の比較的浅い部分には静脈(心臓に戻る血管)があります。ネイルケアの中で最も重要なことの一つは、血液循環とリンパの流れを促進することです。血行を促すことで新陳代謝が高まり、健康で美しい爪を育てることにつながります。

ハンドトリートメントなどの施術に意味があるのは、この循環のしくみを踏まえているからです。

血液循環の3つの働き

第一の循環である血液は、次の3つの働きを担っています。「運ぶ・保つ・止める」と整理すると覚えやすくなります。

リンパ循環の2つの働き

第二の循環であるリンパには、次の2つの働きがあります。血液と違い酸素の運搬は行いません。かわりに免疫を担うのが大きな特徴です。

ハンドトリートメントで「血行とリンパの流れを促す」といわれるのは、この2つの循環が栄養を届け、老廃物を回収するしくみそのものだからです。新陳代謝が高まることが、健康で美しい爪を育てることにつながります。

腕の血液とリンパの循環図。赤の動脈は心臓から送り出す血液、青の静脈は心臓に戻る血液、緑のリンパ管とリンパ節、指先には毛細血管が密に集中している
血液とリンパの循環

図では3つの管が並走しています。赤が動脈(心臓から送り出す血液)、青が静脈(心臓に戻る血液)、緑がリンパ管です。このうち赤と青が第一の循環=血液、緑が第二の循環=リンパにあたります。

注目したいのは指先です。動脈と静脈が細かく枝分かれして毛細血管の密な網目になっています。ここで酸素と栄養が渡され、老廃物が回収されます。爪が薄いピンク色に見えるのは、この毛細血管の赤みが半透明のネイルプレートを通して透けているからです。

リンパ管の途中にあるふくらみがリンパ節で、図では肘のあたりと脇の下に見えます。ここで免疫抗体がつくられます。リンパは酸素を運びません。運ぶのは栄養素と老廃物で、加えて免疫を担う点が血液との違いです。

ハンドトリートメントで手先から心臓に向かってさするのは、この図のとおり静脈とリンパが指先から体の中心へ戻る流れだからです。流れの向きに沿って動かすことで、循環を助けることになります。

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骨格・神経・循環 小テスト(2級)

この章の内容を含む小テストです。毎回ランダムに出題されます。

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