教科書|分野 1/25
01爪の構造と働き
爪(ネイルプレート)とは
一般に「爪」と呼ばれている硬い部分を、ネイルプレート(爪甲)といいます。爪は独立した器官ではなく、皮膚(表皮)が変化してできたものです。ネイルプレートは表皮の角質層が特殊に分化したものです。皮膚の表皮層から爪母によって作られて角質化し、角質層が3層に変化したものです。表皮の一番外側にある角質層が硬く変化したもので、ケラチンという繊維状のたんぱく質からできています。この点で、爪・毛・汗腺・皮脂腺は「皮膚の付属器官」と呼ばれる仲間です。骨は皮膚の付属器官ではありません(ひっかけに注意)。
ネイルプレートの色は本来無色で、厚みは約0.3〜0.8mmです。半透明なので、下にある爪床の毛細血管が透けてピンク色に見えます。また3層構造になっています。硬く見えますが、水分と少量の脂肪を含んでおり、健康な成人の爪の水分量はおよそ12〜16%、脂肪は0.15〜0.75%ほどです。水分量は季節や乾燥によって変化し、乾燥すると割れやすくなります。
この3層は上から順に、背爪(はいそう/トッププレート)・中爪(ちゅうそう/ミドルプレート)・腹爪(ふくそう/アンダープレート)と呼ばれます。極めて薄い角質片が雲母状に積み重なった構造で、このうち背爪と腹爪は極めて薄いケラチンが縦方向に連なり、中爪は最も厚いケラチンが横方向に連なっています。向きの違う層が重なることで、爪は硬いだけでなく柔軟性も備えています。
健康な爪が薄いピンク色に見えるのは、ネイルプレート自体に色があるからではありません。ネイルプレートは半透明で、下にあるネイルベッド(爪床)を通る毛細血管の赤みが透けて見えているためです。
爪の主成分であるケラチンは、硫黄を含むアミノ酸が多い硬いケラチン(ハードケラチン)です。毛髪や爪はこの硬いケラチンからできており、皮膚の角質は硫黄が少ない軟らかいケラチン(ソフトケラチン)です。


3層の図の読み方
図で確かめたいのはケラチンが連なる向きです。上下の背爪と腹爪は縦方向、間にはさまれた中爪だけが横方向に連なっています。向きの違う層を重ねることで、爪は硬さと柔軟性の両方を持てるようになっています。ベニヤ板が、木目の向きを交互に重ねて強度を出すのと同じ考え方です。
厚みの違いも押さえましょう。中爪がもっとも厚く、背爪と腹爪は極めて薄い層です。「いちばん厚いのは?」「横方向はどれか?」はどちらも中爪が答えになります。
この3層構造は、トラブルの理解にもつながります。二枚爪(爪甲層状分裂症)は、この層がフリーエッジ側からはがれた状態です。乾燥して水分が失われると層どうしの結びつきが弱くなるため、水分量12〜16%を保つことが割れ・欠けの予防になります。
爪が作られる場所と成長
ネイルプレートは、爪の根元にあるネイルマトリクス(爪母)で作られます。ここには血管と神経が通っており、新しい爪の細胞が次々に生み出され、押し出されるように前へと伸びていきます。爪甲はこの爪母で作られ、一生伸び続けます。爪母が傷つくと、爪の変形やでこぼこの原因になるため、施術ではこの部分を傷つけないことが大切です。
爪が伸びるスピードは、健康な成人でおよそ1日約0.1mmです。この速さは一定ではなく、季節・環境・年齢によって変化します。傾向として、冬よりも夏の方が速く伸び、加齢とともに伸びは遅く、爪は厚くなる傾向があります。
爪の根元に見える白い半月状の部分をルヌーラ(爪半月)といいます。これは作られたばかりの、まだやわらかく水分を多く含んだネイルプレートが透けて白く見えている部分です。
爪まわりの各部の名称
ここは試験で必ず問われる最重要ポイントです。カタカナ名・漢字名の両方で出題されるので、対にして覚えましょう。まずは下の表と図で、15の部位(A〜O)の位置・名称・はたらきをつかみます。
なお、ネイルプレートは爪床にのっているだけで固定されておらず、後爪郭(ネイルフォルド)・左右のサイドウォール・ハイポニキウムの4辺で囲まれるように支えられています。
| カタカナ名 | 漢字名(読み) | はたらき・特徴 |
|---|---|---|
| ネイルマトリクス | 爪母(そうぼ) | 爪甲(爪)を作り出す部分。血管と神経が通う、最も重要な部分。傷つくと爪の変形の原因になる。 |
| ネイルフォルド | 後爪郭(こうそうかく) | 爪甲を根元で固定している皮膚の部分。爪の根元を保護する。エポニキウムとの違いに注意。 |
| サイドウォール | 側爪郭(そくそうかく) | 爪甲の左右に接している、皮膚のヒダに覆われている部分。 |
| エポニキウム(キューティクル) | 爪上皮(そうじょうひ) | 後爪郭から爪の表面へ伸びる角質。細菌や異物の侵入を防ぐ。 |
| ルースキューティクル | 爪上皮角質(そうじょうひかくしつ) | 爪上皮から生じ、爪の表面に付着した不要な角質。ケアで取り除く対象。 |
| ルヌーラ | 爪半月(そうはんげつ) | ハーフムーンとも呼ぶ。爪の根元に見える半月型で乳白色の部分。後爪郭におおわれていない爪母(新生した爪甲)で、水分が多く白く見える。 |
| ネイルルート | 爪根(そうこん) | 後爪郭におおわれて外に出ていない、爪の付け根部分。 |
| ネイルプレート | 爪甲(そうこう) | 一般に「爪」と呼ぶ硬い部分。ケラチンの3層からなり無色。爪床に密着しているだけで固定はされていない。水分量は約12〜16%。 |
| サイドライン | 側爪甲縁(そくそうこうえん) | 爪甲の左右の側面の際(きわ)。 |
| ネイルベッド | 爪床(そうしょう) | 爪甲がのっている台にあたる部分。毛細血管が水分・栄養を届ける。 |
| イエローライン | 黄線(おうせん) | 爪甲が爪床から離れないための、黄白色を帯びた弓状の線。 |
| ハイポニキウム | 爪下皮(そうかひ) | フリーエッジの下側の皮膚。爪甲が爪床から離れるのを防ぎ、爪の下への異物・細菌の侵入を防ぐ。 |
| ルースハイポニキウム | 爪下皮角質(そうかひかくしつ) | フリーエッジの裏側に付着した角質の部分。 |
| フリーエッジ | 爪先(つめさき) | 爪甲が伸びて爪床から離れた部分。水分含有量が減少するため、不透明に見える。ファイリングで整えるのはここ。 |
| ストレスポイント | 負荷点(ふかてん) | イエローラインがサイドラインに接する点。力が集中しやすく割れやすい。 |


2つの図の読み分け方
試験では上面図(正面図)と側面図(断面図)の両方で出題されます。同じ部位でも見え方が変わるので、どちらの図でしか見えないかを意識すると混乱しません。
| 部位 | 図の中での見つけ方 |
|---|---|
| ネイルマトリクス ネイルルート | 側面図でしか見えません。どちらも後爪郭の下に隠れているためです。上面図では位置を推定するしかありません。 |
| ルヌーラ | 上面図では爪の根元の半月型の白い部分。後爪郭におおわれていない爪母なので、爪母のうち外に出ている部分だけが見えていることになります。 |
| ハイポニキウム ルースハイポニキウム | 爪の下側にあります。上面図では爪に隠れて見えないため、指し示されるのは側面図のフリーエッジの裏側です。 |
| イエローライン | 上面図では、爪甲が爪床から離れはじめる弓なりの線として見えます。この線から先がフリーエッジです。 |
| ストレスポイント | イエローラインがサイドラインに接する点。上面図で、弓なりの線の左右の両端にあたります。 |
まぎらわしいペアは、「上か下か」「生きているか角質か」の2軸で切り分けられます。
- エポニキウム と ルースキューティクル…エポニキウムは生きた皮膚で取ってはいけない、ルースキューティクルは不要な角質で取り除く対象。
- ハイポニキウム と ルースハイポニキウム…同じ関係が爪の下側にもあります。ハイポニキウムは皮膚、ルースハイポニキウムはそこから生じてフリーエッジの裏に付いた角質です。
- ネイルフォルド と エポニキウム…ネイルフォルドは爪を根元で固定する皮膚のひだそのもの、エポニキウムはそこから爪の表面へ伸びた部分です。
- サイドウォール と サイドライン…サイドウォールは皮膚、サイドラインは爪の際(きわ)。「ウォール=壁=皮膚」と覚えると取り違えません。
爪の役割(働き)
爪は単なる飾りではなく、指先で暮らしていくうえで欠かせない4つの働きを持っています。
①指先を保護する…指の骨(末節骨)は指先のいちばん先までは届いていません。爪がその先の部分をおおうことで、外からの刺激や衝撃から指先を守っています。
②物をつかむ・力を入れる…指の腹に加えた力は爪に伝わり、爪が受け止めます。この力を爪圧(そうあつ)といいます。爪があるからこそ、細かいものをつまんだり、ペンで小さな字を書いたりできます。
③からだを支える・バランスをとる…足の爪は、立つ・歩くときに地面をとらえ、全身のバランスを保つのに役立っています。
④感覚を助ける…爪が指先を支えることで、指先の触覚(細かい感覚)がより鋭敏になります。

②の爪圧について補足します。指先の骨(末節骨)や神経は爪の先端まで届いていません。そのため、指先にかかる力を受け止めて跳ね返す役割は爪(ネイルプレート)そのものが担っています。爪が割れていると物をつまむ動作がしづらくなるのは、この爪圧が働かなくなるためです。
なぜ爪圧が必要なのか
指の骨は指先に向かって細くなり、爪の下の中心部までしかありません。そのため指先の先端まで骨は届いておらず、指の腹に加えた力をはね返すには爪が必要不可欠になります。爪が力をしっかりと受け止めることを爪圧といい、これがあることで小さな物をつまんだり、ペンで字を書いたりできます。
指先はとくに敏感な部分
指先には細かな神経や血管が集中しており、知覚を司る末梢神経が体の中でも特に発達している敏感な部分です。爪はその指先を保護することで、人間がもつ機能を手助けしてくれている大切な皮膚の付属器官です。
健康な爪の条件
健康な爪には、次のような特徴があります。試験では「健康な爪の状態」として問われます。
・薄いピンク色で透明感がある(爪床の血色が透けて見える)。
・表面がなめらかでツヤがあり、縦じわ・凹凸・変色がない。
・適度な水分(約12〜16%)を含み、ほどよい弾力と硬さがある。
・割れ・欠け・二枚爪がない。
反対に、乾燥して水分が不足すると、割れ・欠け・二枚爪が起こりやすくなります。爪の健康は、体調や食生活、生活環境の影響も受けます。
爪の構造と働き 小テスト(3級)
この章の内容を含む小テストです。毎回ランダムに出題されます。
小テストに挑戦する爪の構造と働き 小テスト(2級)
この章の内容を含む小テストです。毎回ランダムに出題されます。
小テストに挑戦する爪の構造と働き 小テスト(初級)
この章の内容を含む小テストです。毎回ランダムに出題されます。
小テストに挑戦する爪の構造と働き 小テスト(中級)
この章の内容を含む小テストです。毎回ランダムに出題されます。
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