08爪の病気とトラブル

爪は健康のバロメーター

爪には体のさまざまな状態が現れることから、爪は健康のバロメーターとも呼ばれます。ネイリストはカウンセリングで爪や皮膚の微細な変化を見落とさないことが大切です。

お客様の爪や施術部位に感染性の疾患が認められる場合や、ネイルサービスを避けるべき症状がある場合は、無理に施術せず、専門医(皮膚科)の受診をすすめるなど、適切に判断します。判断に迷うトラブルは、施術できるかどうかを慎重に見極めましょう。

爪や皮膚の適切な判断

ネイリストは、お客様の爪が良いコンディションを保てるよう適切なネイルサービスを実践します。そのためには、爪や皮膚の状態を見て施術してよいかどうかを判断する力が必要です。

判断の原則は次のとおりです。

感染性の疾患が認められる場合や、ネイルサービスを避けるべき症状が見受けられる場合には、専門医の受診をおすすめする。②職能範囲をわきまえる。ネイリストは医療従事者ではないため、診断や治療にあたる行為はできません。「〇〇という病気です」と断定することは避けます。③施術上の注意事項は、口頭だけでなく書面でもお伝えする

カウンセリングでは微細な変化を見落とさないよう注視します。一方で、ネイルテクニックによって改善できるトラブルもあります。「断るべきもの」と「対応できるもの」を見分けられるよう、正しい知識を身につけましょう。

先天性と後天性

爪の異常は、原因によって2つに分けられます。遺伝や生まれつきによるものを「先天性」、けがや病気など後から生じた原因によるものを「後天性」といいます。

先天性には、爪の先天的な異常や、骨・皮膚の角質異常に伴うもの、短爪症(ラケット爪)などがあります。後天性には、全身の病気の一症状として現れるもの、皮膚疾患の一部として現れるもの、爪だけに異常が出るものなどがあります。

爪の色調異常

爪疾患は、外部から見てはっきりと色で判別できるものもあります。施術前などは注意して見てから、施術できるかどうかを判断しましょう。

疑われる原因
白色ルコニキア(爪白斑)
白濁肝硬変、慢性腎不全、糖尿病
黄白色爪白癬、爪甲剥離症、ニコチン付着、内臓疾患、リンパの疾患、新陳代謝の低下
青紫色先天性の疾患、肺疾患
青白色貧血
緑色緑膿菌感染(グリーンネイル)
赤色発熱性疾患、爪下出血
黒褐色金属性色素沈着、アジソン病、薬剤の影響、爪下出血、メラニン色素増加、悪性腫瘍

覚え方のコツとして、青白色=貧血、白濁=内臓疾患、緑色=緑膿菌の3つはそのまま問われやすい組み合わせです。黄白色は原因が多いですが、爪白癬と爪甲剥離症が代表的です。

爪の色調異常のチャート。白色・白濁・黄白色・青紫色・青白色・緑色・赤色・黒褐色と、それぞれ疑われる原因
爪の色調異常
緑色に変色した爪の図。緑膿菌感染(グリーンネイル)による不規則な緑色の色ムラ
グリーンネイル(緑色の色調変化)

図の緑色は、爪そのものが染まったのでも、カビが生えたのでもありません。緑膿菌が出す代謝物の色が、半透明のネイルプレートを通して見えている状態です。

色調異常の表の中でも、グリーンネイルだけは感染性の疾患である点が特徴です。ほかの色調異常(青白色=貧血、白濁=肝硬変・慢性腎不全・糖尿病など)が全身の状態を反映しているのに対し、緑色は爪の局所で菌が増えていることを示します。

そのため対応も異なります。全身疾患が疑われる色調変化は受診をすすめるのに対し、グリーンネイルはまず人工爪をオフしてすき間をなくすことが先決です。なお爪から爪へうつることはなく、全身の感染症も引き起こしません

感染性の疾患と皮膚の疾患

感染する疾患は、原則としてネイルサービスを避け、専門医の受診をおすすめする対象です。原因となる病原体(ウイルス・細菌・真菌・寄生虫)とあわせて覚えましょう。

疾患特徴
接触性皮膚炎(かぶれ)外部刺激によるもので、刺激性とアレルギー性に大別される。
湿疹皮膚表面の炎症。赤み、かゆみ、かさつき、はれなど。
乾癬(かんせん)慢性の皮膚疾患。「疥癬(かいせん)」と読みも字も似ているので混同に注意。乾癬は感染しない。
疾患主な原因症状
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
イボ・ウォート
イボウイルス
(ヒト乳頭腫ウイルス)
〈ウイルス〉
イボウイルスの感染により生じる。角質が増殖した部分に点状の褐色が見られる。
単純性疱疹(たんじゅんせいほうしん)
ヘルペス
ヘルペスウイルス
〈ウイルス〉
免疫が低下した際に、繰り返し発症する。唇(口唇ヘルペス)や皮膚に小水疱が群がって生じる。
伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)
とびひ
黄色ブドウ球菌あるいは連鎖球菌
〈細菌〉
水疱性膿痂疹(みずぶくれ)と痂皮性膿痂疹(かさぶた)に分けられる。成人に多く見られる痂皮性膿痂疹は、季節に関係なく発症し、小さな水疱に始まり、膿疱とびらん(湿潤してじゅくじゅく赤くなること)を生じる。
手白癬(てはくせん)白癬菌
〈真菌〉
白癬菌の感染により生じる。小水疱、鱗屑、びらん(湿潤してじゅくじゅく赤くなること)を生じる。
疥癬(かいせん)ヒゼンダニ(疥癬虫)
〈寄生虫〉
ヒゼンダニの寄生により生じる。感染してから2〜4週間の潜伏期間を経て発症し、激しいかゆみを伴う。
疾患主な原因症状
爪甲下の尋常性疣贅
(イボ・ウォート)
イボウイルス
〈ウイルス〉
指先にイボウイルスが感染し、爪甲下の角質増殖が特徴である。なかなか完治しにくい
爪白癬(つめはくせん)
オニコマイコーシス
白癬菌
〈真菌〉
白癬菌の侵入により、爪甲が白濁または黄白色に変化したり、剥離したりする。症状によって異なる。
爪疥癬(つめかいせん)ヒゼンダニ(疥癬虫)
〈寄生虫〉
感染してから2〜4週間の潜伏期間を経て発症し、激しいかゆみを伴う。爪甲下にヒゼンダニの卵があり、発生を繰り返す場合がある

病原体の分類は頻出です。イボとヘルペス=ウイルス、とびひ=細菌、白癬=真菌、疥癬=寄生虫と対応させて覚えましょう。

感染性の疾患と病原体の分類図。ウイルス(イボ・ヘルペス)、細菌(とびひ)、真菌(白癬)、寄生虫(疥癬)
感染性の疾患と病原体

感染性の疾患は、何が原因の生物かで3つに分かれます。ここを取り違える問題が繰り返し出ます。

病原体疾患
ウイルス尋常性疣贅(ウォート)/単純性疱疹(ヘルペス)
細菌伝染性膿痂疹(黄色ブドウ球菌・連鎖球菌)/緑膿菌感染(グリーンネイル)
真菌(カビ)爪白癬・手白癬(白癬菌)/カンジダ
寄生虫疥癬(ヒゼンダニ)

ひっかけの定番はグリーンネイルの緑膿菌が「細菌」である点です。緑色というイメージからカビ(真菌)と結びつけてしまいがちですが、真菌なのは爪白癬のほうです。また疥癬はダニ=寄生虫で、細菌でも真菌でもありません。

あわせて、乾癬(かんせん)と疥癬(かいせん)は字も読みも似ていますが別物です。乾癬は感染しない皮膚疾患、疥癬はヒゼンダニによる感染性の疾患です。

緑膿菌感染(グリーンネイル)

緑膿菌(りょくのうきん)は水回り、土の中、人間の大腸の中などに常在している菌です。緑膿菌の出す代謝物の色が緑なので「カビ(真菌)」と勘違いされやすいのですが、緑膿菌は細菌です。ここは頻出なので必ず押さえましょう。

特徴を整理します。

・爪甲で緑膿菌が増殖しても、全身の感染症を引き起こすことはありません。・爪から爪へとうつることもありません。ただし爪の衛生と健康のために早く改善すべきです。・病原性が低いため、健康を維持していれば感染することはほとんどありませんが、悪因子が重なれば健康な方でも感染を引き起こす場合があります

感染が起こりやすいのは、アクリルやジェルネイルが浮いたすき間と、爪甲剥離を起こした部分です。リフトした部分に水分が入り込み、そこで緑膿菌が繁殖します。爪甲剥離はカブレや外傷など様々な原因で起こりますが、爪甲と爪下皮の間に角質増殖が起き、そのすき間に緑膿菌が侵入すると爪甲剥離をさらに悪化させます。

季節との関係も覚えておきましょう。グリーンネイルが起こりやすい梅雨の時期は、お客様に早めのメンテナンスをおすすめします。高温多湿の時期は色素の変化も早くなります

緑膿菌が感染しやすい2つのすき間の断面図。①ジェルが浮いたすき間、②爪甲剥離を起こした部分
緑膿菌が感染しやすい2つのすき間

緑膿菌が繁殖するのは水分がたまるすき間です。図はその2か所を示しています。

厄介なのは、この2つが互いを悪化させることです。すき間に緑膿菌が侵入すると、爪甲剥離をさらに悪化させます。そのため対応は「上からかぶせる」ではなく、人工爪をオフしてすき間をなくすのが原則になります。

季節との関係も図と結びつけて覚えましょう。梅雨など高温多湿の時期は繁殖しやすく、色素の変化も早く進みます。浮きを見つけたら早めのメンテナンスをすすめるのは、このためです。

ネイリストが知っておくべき爪のトラブル

爪のトラブルは、ギリシャ語由来の医学用語で出題されることがあります。爪を表す語は「オニコ(onycho)/オニキス(onyx)」で、これに語源が組み合わさります。
lysis(リシス)=溶解 → オニコライシス(爪甲剥離症)
phagy(ファジー)=食べる → オニコファジー(咬爪症)
leuko(リューコ)=白ルコニキア(爪白斑)
rexis(レクシス)=裂ける → オニコレクシス(爪縦裂症)
pterygium=翼 → テリジウム(翼状爪膜)

和名医学用語症状・特徴
爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)オニコライシス爪甲が爪床から剥がれて白く見える。外傷・カンジダ感染・甲状腺機能異常などが原因。
爪下出血(そうかしゅっけつ)ヘモーレッジ
(ブルーズドネイル)
爪床の損傷によって豆状の血腫ができ、爪の下に出血が見られて黒く見える。
咬爪症(こうそうしょう)オニコファジー爪を噛む習慣が原因で、爪先が変形する。
ささくれ・さかむけハングネイル爪の周りの皮膚が乾燥し、ひび割れる。
爪白斑(そうはくはん)ルコニキア
(ホワイトスポット)
爪に白い点状のものが現れ、多くは爪の成長とともに先端へ移動して消失する。
爪縦裂症(そうじゅうれつしょう)オニコレクシス爪に縦の筋が入り割れる。乾燥やリムーバーの多用が原因。
翼状爪膜(よくじょうそうまく)テリジウム爪上皮が過度に伸びて、爪の表面をおおう。
爪甲萎縮症(そうこういしゅくしょう)オニカトロフィア爪甲がもろく小さくなり、剥がれ落ちる。
巨爪症(きょそうしょう)オニコオキシス爪甲が異常に厚くなる(爪肥厚症〈そうひこうしょう〉)。
爪鉤彎症(そうこうわんしょう)オニコグリフォーシス(クローネイル)深爪や抜爪、爪白癬などの感染が原因となって、爪が大きく湾曲し分厚くなる。
バチ状指(ばちじょうし)ヒポクラテスネイル指先の爪が大きく丸く盛り上がる。心・肺疾患が背景のことも。
卵殻爪(らんかくそう)エッグシェルネイル爪が薄くやわらかく白っぽくなり、先端が内側へ湾曲する。栄養障害や内臓の疾患が背景にあることも。
匙状爪甲(さじじょうそうこう)コイロニキア(スプーンネイル)爪の中央がへこみ、スプーンのように反り返る。鉄分不足や貧血、遺伝、指先をよく使う仕事などが関係する。
細菌性爪郭炎(さいきんせいそうかくえん)パロニキア爪の周りに細菌が侵入して炎症・腫れを起こす(ひょう疽〈そ〉)。
真菌性爪郭炎(しんきんせいそうかくえん)カンジダ性爪郭炎カンジダ(真菌)感染で、爪郭に発赤や腫れが出る。
グリーンネイル緑膿菌感染緑膿菌〈りょくのうきん〉の感染で爪が緑色になる。
陥入爪(かんにゅうそう)オニコクリプトーシス(イングローンネイル)深爪や合わない靴の圧迫などで、爪が周りの皮膚に食い込み炎症を起こす。
爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)ロンギトゥディナルストリエーション加齢や乾燥により、爪の表面に縦の筋(線)が入る。
爪甲横溝(そうこうおうこう)ボーズライン(コルゲーテッドネイル)後爪郭へのダメージ(栄養障害・外傷など)で、爪に横方向の溝ができる。
胼胝(たこ)カルスくり返す圧迫で皮膚の角質が硬く厚くなった状態。足の裏などにできる。
魚の目・鶏眼(うおのめ・けいがん)コーン合わない靴などの圧迫で角質に硬い芯ができ、神経を圧迫して痛む。
よくある爪のトラブル:グリーンネイル・二枚爪・爪甲剥離症・ささくれ(ハングネイル)・爪白斑
よくある爪のトラブル
卵殻爪(エッグシェルネイル)と匙状爪甲(コイロニキア/スプーンネイル)の爪の断面イラスト
覚えておきたい爪のトラブル

医学用語と一般用語の対応

爪のトラブルには、医学用語(オニコ〜など)とは別に、サロンの現場で使われる一般用語(英語名)があります。教本ではこの2つが並べて示されており、どちらの呼び方で問われても答えられるようにしておく必要があります。

和名医学用語一般用語
爪甲剥離症オニコライシスネイルセパレーション
爪下出血ヘモーレッジブルーズドネイル
咬爪症オニコファジーネイルバイティング
ささくれ・さかむけハングネイル
爪白斑ルコニキアホワイトスポット
爪縦裂症オニコレクシススプリットネイル
翼状爪膜テリジウム(テリジアム)
爪甲萎縮症オニカトロフィアアトロフィ

一般用語は見たままの英語になっているものが多く、意味から引けます。セパレーション=分離(爪甲剥離症)、ブルーズド=あざになった(爪下出血)、バイティング=噛む(咬爪症)、スプリット=裂ける(爪縦裂症)です。

症状の細かい点も押さえておきましょう。爪白斑(ホワイトスポット)は爪の成長とともに消失します爪甲萎縮症(オニカトロフィア)の原因は皮膚疾患や内臓疾患で、爪甲がもろく小さくなり剥がれ落ちます。翼状爪膜(テリジウム)は、爪母で一部の爪が作られずに爪上皮が過度に伸びる状態です。

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爪と皮膚のトラブル 小テスト(3級)

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